サウンドその11:「ギターの音は熟成していく 弾く者の楽しみとともに」


■ギターの音を馴染ませていくのには「時間」がかかるのです。ヴィンテージという言葉をあまり好みませんが(ただの宣伝文句のように安っぽく使われているから)、何十年もプレイに耐えてきたギターの音というのは、まさに「昇天もの」です。めったにない個体でしょうけど。それは特別としても、けっこうお高い値段であった私のほぼ新品状態ギターより、それよりお安い友人の古いギターの方が無茶苦茶良い音を奏でているという、悔しいやら妬ましいやらという経験があります。そりゃもちろん、「腕の差」というものは大きい要素なのですが、何度か聞いているうちに、自分でその友人のギターを弾いている時に感じざるを得ない事実として、ギターの「響き」が違うことに気が付きます。これを「箱鳴り」といえばいいのでしょうか。
■あえてその「響き」について表現すれば(音を言葉に表すのは難しい…)、「ギターの音の下にもう一つの音がある」とでも言えばいいのか、例えば一つ一つの音は私のギターの方が良いとしても、ギタープレイの中で響いてくるギターの音が明らかに違うのです。「音がひとつにまとまっている」というか、何とも言えぬ心地よさが耳に届いてくるのです。最初は不思議でしたが、色々と楽器店の人の話や本を読んでいると、事実そういうことがあるという事です。弾き続けたギターは「響き」が良くなっていく…。これは「音の熟成」とでも言えばいいのか。弾き続けてなければダメです。ただ、何年もほったらかしにしておいただけでは、むしろギターが「なまくら」になってしまうでしょう。
■そういうことが感覚的に分かったのは後日、それなりに時間の経った時なのですが、当時は自分のギターより「お安い」ギターの方が良い音を奏でている現実に、「心の狭さ」全開で、相手のギターブランドの方が良いのかと単純に思ったりしました。そうではなかったのです。プロのプレイヤーやトップアマの人の中にはギターの「響き」を良くするために、テレビやステレオなど、音がしているところにギターを置いて、常にそのギターを共鳴させておく、ってな方もいるそうです。けっこう著名な方も…。理屈ではそうでしょうね。弾いてはいませんが、ギターが「共鳴」して「鳴っている」わけですから、その中で「熟成」していくのでしょう。
■では、その「熟成」のための時間、期間とはどれくらいのものが必要なのでしょうか? 正直、これは分かりません。「弾く頻度」「ギターそのもののポテンシャリティ」「気候」等々、色々な要素が絡むでしょうから。ただ、この「気候」というのは結構大きいのかな、と思います。自然の「気候」だけではなく、「保管状況」という意味も含めれば、そうなると「環境」ですね。本当かどうかは知りませんが、日本で作って弾いていたギターを、乾燥した気候のアメリカに持っていくとピシッと割れてしまったって話を聞きます。逆に、乾燥したアメリカのギターを日本に持ってくると、カラカラに乾いたそのギターから信じられないほどの「響き」が出て、しばらくするとそれが大人しくなってしまうとか。これに関しては私も経験があります。おそらくアメリカの乾燥した気候の中で弾かれていただろうというカラカラのギター(無茶苦茶軽い)を弾いてみてビックリしたことがあります。なるほど「枯れた音」というのはこのことか…、なんて思いましたね。できるだけその音を維持するため、湿度計で湿度管理をしています(我ながら、マメ)。
■おそらく、そのギターの「熟成」は、弾き続けていて、それが壊れない限り、ジックリと進んでいくのでしょう。前述しました「音の下にもう一つの音がある」というのは、あながち乱暴な感じの表現ではないと思います。これは、あるクラシック好きの知人が言った言葉ですが、「オーケストラを聞いていると、個々の楽器の音が聞こえる。でも、自分が堪らない音がそこから聞こえてくる。それがオーケストラの音」、とか。分かります。それがまさに「ハーモニー」なのでしょう。「木」と「人」との熟成は今日も少しづつ進んでいます。「人=私」が遥かに遅れながらも…。
ギターのある生活へ
■これからギターを始められる方のご参考にでもなれば。

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