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サウンドその44:「春先とはいえまだ肌寒い日 南米生まれのZ君 帰る」



ギターのある生活 ようやく時間がとれたので、ブリッジ剥がれ(浮き)補修のギターと入れ替わりで入院していた南米生まれのギター「Z君」を引き取りに、いつものリペアショップに行ってまいりました。この「Z君」、これで二度目の入院ですが、前回はギターとして壊れていた状態からの修復という事でけっこうな手術(お財布的にも痛かった…)でしたが、今回は力木(ちからぎ)剥がれで、しかもバック側ですからまあ、軽いねん挫で治療みたいなものです。修理代も、福沢諭吉さんの出番はない程度。それに連続しての修理なのでちょっとまけてもらえたし。

ちなみに、トップでもバックでも、力木(ちからぎ:ブレーシングのことです)が剥がれるとどうなるか? ハイ、腰に力が入らなくなったような状態で、ギターの音圧に力強さが無くなり(剥がれ方にもよりますけど)、ちょっと籠ったような感じの音になります。もし、ご自分のギターでそのような感じになった時、トップでもバックでも力木の入っている辺りを、軽くノックをするように手でコンコンと叩いてみてください。多分、皆さんご存知の事とは思いますが、力木が剥がれていると、その箇所でパンパンといった音がギターの内部から聞こえてきます。剥がれた力木が内部の木部を叩き返してくる音です。「気のせい」程度ではなく、ハッキリと聞こえてきます。

この力木剥がれの修理は比較的お安い費用で済みます。バックの力木なら一万円はかかりません。トップの奥の方で見えにくい位置の場合は、少し高くはなるようですが、まあ、大抵剥がれるのはバックの方です。ギターにもよるのですけど、トップは弦の張力に耐えるためそれなりに頑丈に作られていますけど、バックは「音の響き」を出すためか、意外と弱い(細くて薄い)力木が使われている場合があるようです。国産のギターは殆ど、けっこう頑丈な力木を使っているようですけど、海外の工房やルシアーメイドのギターは一般にバックの力木が細かったり薄かったりする場合が多いような気がします。まあ、日本でも一部力木を省略してバックを響かせるような作りのギターがあるようですが(見たことはありませんけど)。それぞれに設計思想があっての違いだと思います。

で、この「Z君」のバックも力木は少々細く作られていて、それに加えて、バック材はココボロで良材ではあるのですが、木がよく「動く」みたいで、前回は周辺のバック材剥がれの修理で今回は力木剥がれ…。皿回し状態になりませんように…。バックの材を上から見るとジャガイモのように不規則にうねっているような感じ。センターの「接ぎ(はぎ)合わせ」部分にも軽い剥がれが起きていたので、そこもくっ付けてもらいました。弾いてみたら、音に芯が戻ったというか、音圧に力強さが戻ってきました。このギター、トップが少々分厚いホンジュラスマホガニー(杢が美しい)で、サイド&バックがまさに「ムンク」の異名通りの見事な杢目(追い柾目)なのですが、作りはややいい加減。とは言え、良材の単板が響かせてくれる音は絶品です。私は「単板至上主義」ではありませんけど、やはり「良い木」はそれだけの響きを聞かせてくれます。

と、自分のギター自慢をしていても仕方がないのですが、リペアショップにはあまり通う必要のない方がお財布的には良いに決まっているのですけど、変でしょうが、ここに来るのが楽しみでもあるのです。何故かって? そりゃ、自分が大好きなものが修理待機中とはいえ、ズラリと並んでいるわけですから、眺めているだけでも、犬のように「ヘッヘッ」と言いたくなるくらい楽しいのです。世に名機といわれているギターが勢揃い。前回来たときは初期の頃のフライングVがあり、ギブソンのロゴが立体的な、あのアルバートキングが抱えていた、今のものとは違ってもっとエッジの効いたデザインのフライングVです。どれだけ古いのかと思いましたけど、フライングV自体が生まれたのは1958年。アコースティックほどの古さではないですね。どーでもいいことですけど、還暦で、アラカンオヤジと同じです…、ってどうでもいいか…。

で、そうした入院中のギターを眺めているだけならいいのでしょうけど、やたらアレコレ質問するので、多分、私は「仕事の邪魔」をしていると思います。スタッフの方々に内心、どう思われているやら…。って、事を構ってはいられないほど楽しいのです。あちこちにネックを抜かれて「ネックリセット」を待っているマーチンがお寝んねしています。首無しボディには何故かマーチンが多いような…。まあ、それだけ古い個体が多いのでしょう。「ネックリセット」は結構なお値段がかかりますけど、アコースティックギターの「ネック元起き(14フレットのボディとのジョイント部分でネックが曲がって起き上がる)」は「木でできている楽器」故の構造的な欠陥かもしれません。気を付けていても、ブリッジ剥がれなどと一緒で起きる時には起きてしまいます。まあ、「ネック元起き」が起きていようが、それでちゃんと音が出て、弾けているならOKですけど。前回にも書きましたけど、あまり「神経質」になるのは良くありません。せっかくの楽しいギターという趣味が、要らぬ気を使い過ぎるものになってしまいますから。

さあ、リペアショップに行くたびに仕事の邪魔をしている私は「Z君」を抱えて帰ることにしました。皆さん、あとは仕事に専念してください。で、帰る時に「ありがとうございました」は社交辞令としていいのですが、思わず「じゃ、また来ます」って言っちまったのは、何でしょう…。リペアにまた来るっていうのはギターが壊れたガチョーンな時…。しかし、ここに来ると、色々なギターを見て楽しめる…。実に倒錯した心理が思わず口に出てしまったのでしょうか…。複雑な思い…。

季節は春、とはいえ、まだ肌寒い日に「南米生まれのZ君」を車に載せて、家路を急ぎました。

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