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サウンドその54:「枯渇する『木の音』 替わりはない それなら育てる」



ギターのある生活 私はギターの「材(トーンウッド)」が持つ「音」に興味を持って、それを楽しんでいます。ギターが音を創り出すのはボディで(ネックも多少影響しますけど)、それはトップ&サイド&バックで構成され、使われる「材」の組み合わせでその「響き」は変わります。どれがベストという訳ではなく、スプルースのトップとローズウッドのサイド&バックの音が、私は一番好みではあるのですけど、ローズウッドにも色々あって、そのすべてを手に入れるというのはよほどのお金持ちでなければ無理でしょう。最低限、手が出せる範囲で、ブラジリアン・ローズウッド、イースト・インディアン・ローズウッドのギターは持っています。しかしこれらの「材」は乱伐によって次第に良質のものが市場から消えて行っています。

ローズウッドで最高の「材」とされているのはブラジリアン・ローズウッドでしょう。別名「ハカランダ」とも呼ばれ、こちらの方の呼称の方が一般には馴染みがあるでしょうけど、ハカランダというのはローズウッドの習慣的な流通名らしく、「これがハカランダ」というものではないようです。また、ハカランダという正式な名を持つ、ギターの「材(トーンウッド)」とは全く異なる植物もあります。希少となったローズウッドの代替として、ホンジュラス・ローズウッド、ココボロ・ローズウッド、マダガスカル・ローズウッドがありますが、これらもいずれは希少な材となるでしょう。更にその代替として、アマゾン・ローズウッド、パナマ・ローズウッド、カンボジア・ローズウッドなんてのもありますが、その他にも数えきれないほどの「材」があります。

ちなみに、上記の中にあるココボロという「材」をサイド&バックに持つギターも持っています。これらの木は「絶滅」を防ぐためのワシントン条約により、保護のレベルが上がるに従って、入手しにくくなる事が容易に想像できます。比較的ポピュラーで、家具やギターの「材」として使われているマホガニーもどうやらそろそろ規制されそうな気配です。どうしてそうなるのかといえば、先に述べた通りいずれも乱伐による絶滅危惧からです。人は、自然の恩恵を無限のものと勘違いし、多くの種(植物に限らず)を絶滅、もしくは絶滅寸前に追い込んでいます。

ギターの「材」に限らず、木管楽器に使われる「材」も準絶滅危惧種に指定され、市場で安定的に入手するのが次第に困難となっているようです。「グラナディラ」という木をご存知でしょうか。正式には「アフリカン・ブラックウッド: African blackwood」という植物だそうですけど、楽器の「材」の流通名として「グラナディラ」と呼ばれているようです。クラリネットやオーボエなどの木管楽器の「材」です(ギターの指板に使われることもあるようです)が、それについて新聞(朝日新聞.2019.3.1)で興味深い記事を見付けました。日本のヤマハが、この「グラナディラ」に替わる材料の開発に取り組んでいたそうです。で、その研究の結論は「替わりはない」という事でした。

その結論を受けてヤマハが取り組んだのは「替わりが無いのなら、育てよう」という方針です。「グラナディラ」の歴史から、生態の現地調査、現地(アフリカ)のNGOと協力しての森の保全、そして植林。その成果が出るまでにはまだまだいくつものハードルがあるでしょう。しかし、楽器メーカーであるヤマハのこの取り組みには大いに共感します。その事業の成功には「人と人との心が通じ合う事が、一番大事である」ということを、スタッフの方は痛感したそうです。そうだと思います。楽器を作るために「木」を植え、そしてあらゆる場面での「人の技」が美しい木管楽器の音を奏でてくれるのです。

以前、たまたま近くの公園で高校生が友達同士で木管楽器の練習をしているところに通り合わせ、自然の中で至近距離から生で聞くそのクラリネットの音に、思わず足を止めて聞き入ってしまった事があります。あの音は、どんな他の「材」からも「電気的な信号」からも響かせることはできないでしょう。その音は辺りの空気を和ませ、聴覚だけでなく、味覚さえも刺激する音でした。

私はそうした事をギターで楽しんでいます。半世紀以上経っても甘い香りを放ち続ける「ブラジリアン・ローズウッド」の響きは「このギターを手に入れて良かった(少々お高い…)」とつくづく思わせてくれます。「木の音」「人の技」、それ以外には何もないのです。それが、空気を響かせて人を包み込み、至福の時間を過ごさせてくれます。少々気障な表現で気恥ずかしくも思いますが、本当にその通りなのです。ギターのように大きな楽器を作るための木を育てるには、非常に長い時間がかかると思いますが、ぜひ、未来のために、ヤマハのような取り組みが様々な場面で進むことを願います。

真面目過ぎる記事になってしまいましたけど、アラカンでギターを始めようと思われた方、思い切って少々お高いギターに手を出しても、決して後悔はしないと思います。生まれて初めて買ったギターが300万円というアラカンの方がいたようです…。

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