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航空技術からギターが オベーション


オベーション ロゴ
オベーションというギターを知ったのは、学生の時です。直接ギターのことを知ったのではなく、その当時、ギター好きの友人が「トリビュータリースっちゅうアルバム聞いたか! むっちゃ、ええで!(関西弁)」と言ったことからです。「Tributaries(トリビュータリーズ)」とは、フュージョン界の天才、奇才、巨人と称されたギタリスト、「Larry Coryell(ラリー・コリエル)」のアルバムのタイトルです。私は当時その名前を知りませんでした。まだ、ギターを始めてそれほどの腕も無いころです。ちなみに「フュージョン(Fusion)」とは、当時の音楽シーンで盛んに使われた言葉で、一般的には、ジャズをベースに、ロックやラテンミュージック、R&B、電子音楽などを「フューズ(Fuse):融合」させた音楽のジャンルですが、要は何でもありの「鍋」みたいな音楽ですね(蛇足ですが、「導火線」の意味をもつヒューズの綴りも"Fuse"です)。個人的にはそれほど興味はありませんでした。

トリビュータリーズ アルバムが、友人がさかんに勧めるものですから、アパートに行って拝聴することにしました。で、私はトリビュータリーズを聴くより先に、そのアルバムにデザインされているギターのヘッド部分に目が留まりました。その見たこともないヘッド形状に、なにやらクラシカルなギターか何かなのかと思いました。右の画像がそのトリビュータリーズのアルバムのデザインです。ちなみに、当時2,000円近かったそのアルバムは、決して貧乏学生には安い買い物ではありませんが、速攻、買いました。それ以来、ラリー・コリエルのファンとなり、このトリビュータリーズを含めて、今でも5枚ほどのアルバムを持っています。プレーヤーが無いので聞けませんが…。

ラリー・コリエルなる人物のギタープレイを聴くのは初めてでした。結論から行くと、そのアップテンポでノリノリ(グルービー)なギターのフレーズと、聞いたことのないサウンドに少なからず驚きました。そのサウンドが要はオベーションギターのサウンドであったわけですが、とにかく、聞いたことのない、表現は稚拙ですが「焼けて弾けた豆が、あちこちに飛び回っているような」音が次々に飛び出してきます。そして、しばらくしてそのサウンドを生み出していたオベーションなるギターを店頭で目にすることとなります。まず、その仕上げの美しさに息を飲みました。まだ、アダマスやエリートなどのリーフホール(葉っぱのデザインでボディのショルダー部にサウンドホールが複数空いている)ではなく、センターに派手なロゼッタに囲まれたホールのあるものでした。で、さらに驚いたのはそのサイド&バックです。まるで丼というか、木ではありません。アボカドを縦に割ったような形状で、素材はガラス繊維の「強化プラスティック」であるとか…。でそのサイドには、エレキのように、いや、エレキより手の込んだスイッチ類が取り付けられています。サイド&バック(?)には薄いホロータイプと厚いディープタイプがあるとか…。

とにかく、かなりインパクトのあるギターでした。で、なんと後部にアコースティックのくせにジャックがあるではないですか(アコースティック用のピックアップというのは既にありましたけど)。そうなんです。これは、私が初めて目にした「エレアコ」だったのです。ちなみに、私も知りませんでしたが、「エレアコ」というのはどこかの会社が既に商標登録しているようですね(しかし、今はほぼ一般名詞となっている言葉です)。それで、オベーションギターがヘリコプターのメーカーが作ったことを知ってまたビックリ…。「オベーション・ギター・カンパニー(Ovation Guitar Company)」は、アメリカのメーカーです。日本における輸入代理店は、株式会社神田商会だそうです。ちなみにその設立は1966年(昭和41年)です。後に発売されたアダマスを店頭で見た時、あまりの美しさに溜息が出ました。そしてそのお値段を見て、また溜息が出ました(神田商会さん、宣伝しますからアダマスの画像を貸してください)。
オベーション アダマス
オベーションギターの最大の特長であるそのサイド&バックというか、丼のような形状のボディバックは一般的なアコースティックギターの「表と裏がフラット」な形状とはかなり違います。ボディ内部の音をサウンドホール(表板)の中心に集めるための構造という事ですが、この形では一般のアコースティックギターが重視する「箱鳴り(ボディーが共鳴して響く)」を逆に抑えてしまうことになりますけど、実はこれが「エレアコ」であることにとって非常に重要になるのです。つまり、箱鳴りを抑えて「ハウリング(Howling)」も抑えているという事です。これは、ギターから出力されてアンプから出てきた音をギターがまた拾って、ピィィィーといった少々不快な音が出ることです。このことは「ギターのある生活」の「自分のギターが合板か単板か見分けて、それで何か…?」に書きましたが、オベーションギターも表板は木を使っていますが、サイド&バックは樹脂で、その後に現れるエレアコは殆どサイド&バックが木で加工されていますが、オベーションのような樹脂の加工技術より木の加工技術を活かして、「鳴らない=鳴りを抑えた」サイド&バックを合板技術で意図的に作っているようです(合板は、目的に沿った素材を作ることができる技術です)。全てはピックアップの音をクリアにするためのハウリング防止が目的です。

と、いうことは「箱鳴り」を抑えているわけですから、生音はどうなるのでしょうか。やはり、「鳴らない」ギターという事になるのでしょうか。答えは半分Yesで、半分Noです。ギター職人は合板の加工に工夫を凝らし、生音もある程度殺すことのないギターを作っています。もっとも、生音を重視する人はわざわざエレアコを手にはしないでしょうけど。オベーションが切り開いたエレアコの音は様々なミュージシャンに受け入れられ、まさに冒頭で言ったフュージョン(融合)を起こしています。初めて聞いたその音に、正直、ギターとしては違和感を覚えながらも、その音が刻むリズムに心地よさを覚えたのも事実です。名機と呼ばれるギターは数々ありますが、オベーションはギターが創るミュージック・シーンを変えた(広げた)画期的な存在です。ヘリコプターのプロペラを作る技術が、音楽の世界に大きな影響を与えたのです。自然の木だけではない、人の作った「素材」がノリノリのサウンドを奏でます。

そして、あのアダマスのデザインで驚かされたのは、それまで、当然の如く表板の真ん中にあるはずと思っていたサウンドホールが、表板の両肩に複数ある、前述の「リーフホール」です。これもハウリング防止の一環だそうで、今でこそこのような位置にホールのあるアコースティックギターはそれほど珍しくありませんが、オベーションのギターで初めて見たこのデザインは、美しいとともに、何やら「未来的」な予感を覚えさせるものでした。デザインと設計思想がマッチした結果、新しいものが生まれる。それは実現しています。その後の「エレアコ」というジャンルとして。ギターに関しては保守的な私は、やはりマーチンが完成させたギターのあの形と音に惹かれてしまいますが、オベーションに与えられたカルチャーショックとでも呼べばいいのか、その驚きは未だに新鮮に思い出されます。ギターが「伝統楽器」として一部の愛好者に埋もれてしまうことなく、アコースティックギターとエレキギターとの垣根も取っ払って、様々に進化していくダイナミズムは、このオベーションの存在があったからこそであると思います。ギターという楽器は、まだまだ進化していく途上にあるのでしょう。音楽とともに。

<神田商会のホームページ>
https://www.kandashokai.co.jp/

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