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一度の失敗で消えたのか… タコマ


タコマ ロゴ
「タコマというブランドのアコースティックギターをご存知ですか?」、と、思わずそんな書き出しで始めたくなるような存在が、「TACOMA(タコマ)」です。一世を風靡したと言ってもよいブランドであると思います。タコマは1991年、アメリカのワシントン州タコマで創業された、ギターメーカーとしてはかなり若いブランドです。創設者はヤング・チャン。エレアコ、そして透明なピックガード、独特な形状のブリッジとヘッド、そしてドレッドノート中心の中に先祖帰りのように現れたパーラータイプのシルエット(もとはやはりドレッドノートボディ)。それらすべてが新鮮でした。しかし、そのブランドを楽器店の店頭で求めても、今はありません。中古で並んでいる程度でしょうか。

タコマ パプーズ 「タコマ パプーズ(Tacoma Papoose)」が、その往年の存在感を示しているように思います。著名ギタリストがクラシックの「カノン」を演奏して名を知らしめた機種です。ミニギターですが、作りはしっかりとしているというか、ありがちな「音痴君(ピッチの狂い)」もなく、しっかりとした音を奏でます。「ペイズリーサウンドホール」と呼ぶらしく、独特のサウンドホールをそのショルダー側に持っています。けっこうアタックの効いた音から不要なサスティーンを抑えた、明るい音です。私もけっこう作りの良いミニギターは持っていますが、まあ、まさにギターのミニチュア版というもので、このパプーズのような個性豊かな音は奏でてくれません。一度その音を聞いてみると欲しくなるかもしれませんよ。少々、ミニギターにしてはお高いですけど(中級クラス以上のギターが買えます)。

しかし、この一世を風靡し、次世代のギターの方向を予感させたタコマですが、アッという間にその姿を店頭から消してしまいました。本当に、気が付いたら無くなっていたという感じです。当時は山野楽器が販売代理店を務めていたと記憶していますが、このギター、なんと「慢性塗装白濁症」だったようです。塗装の白濁だけならな他のギターにも見られますが、このタコマの白濁は短期間で、高い発生率で起こり、酷いものは塗装が白濁した上にベロベロに剥げてしまったようです。画像で塗装の剥げた個体を見ましたが、見事なほどに「皮が剥けたような」感じでした。これはおそらく完全にラッカーの選択ミスで、配合か塗り方を間違えたのでしょう。代理店の山野楽器はその保証の対応でテンテコマイだったでしょう。で、手を引いた、と。

今ではフェンダーの傘下に入っているようですが、このブランドが復活する気配は全くと言っていいほど、ありません。そこに、どうにも不可解な感が拭えません。塗装だけの問題なのですから、もう一度そこを考えてやり直せばいいのでは。一度だけの失敗で市場から撤退せざるを得ないほどに影の薄いブランドでは決してなかったと思えます。あの問題が無ければ今頃は、アメリカ市場でマーチンやギブソンを相手に回して、タコマかテイラーかといった勢力を張っていたと思えます。それが、意外と脆弱であったのは、そもそものビジネスとしての「楽器製造」の姿勢に問題があったのではないでしょうか。創設者のヤング・チャンが率いる企業「ヤング・チャン・アメリカ」は純粋な楽器メーカーではなく、材木商など、おそらくは多角的な経営を志向する企業であったと思われます。それが、楽器製造ビジネスとしてギターに進出したのでしょう。つまり、事業のコアにギター作りがあったわけではなさそうです。この辺りは、拙い英語力で英語のページを読み、グーグル翻訳の「奇妙な日本語」も参考にして調べましたので、少々、憶測的にはなっていますけど。

タコマ ギター しかし、どう考えても、あれだけのブランドが一度の失敗で消えてしまうのは不思議です。そこには、最も必要な「ブランド再生」への熱意がなかった、というあまりに単純な答えしかないのでしょうか。それを否定しきれる情報はありません。ビジネスですから「運が無かった」で終わりと言うことでしょう。今現在、日本での輸入代理店は無いようです。山野楽器はかつての一件で相当に懲りたのでしょう。他の、日本の楽器販売企業も同じでしょう。

私的には特にタコマファンであるわけでもないのですが、なかなか明るくて、低音にズバンとした迫力のある音が印象的でした。けっこうプロにも愛用されていて、今でもパプーズを初め、コアなファン層に人気のモデルがいくつかあるようです。コアウッドの「EKK19c」とか。

タコマ・ブランドのギター自体はまだ存続していますので、手に入れる方法が全くないということもありませんが、このブランドがかつての勢いを取り戻すというのは限りなく難しいでしょうね。歴史の中で一瞬でも光ることができたブランドであるということは僥倖なのでしょうが、それがあのような終わり方をしてしまうと言うのはかなり珍しいのではないかと思います。やはり、「人」の熱気、想いなど、様々な力が情念として働かない限り、そのブランドは成り立たないのでしょう。「人」がいないところでは、どれほどの「材」で作ろうと響きもしない木の塊、そうなってしまうギターもあるということです。惜しい…。

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