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ピックギターって、アコギ?エレキ?


ピックギターもアコースティックギターもギターです。以上。ってな答えで納得できる人っていないでしょうね。しかし、極力簡単に言ってしまえばそうなんです。まあ、それでは身も蓋もないので、歴史的なことを含めて簡略化してしまえば、オーヴィル・ヘンリー・ギブソンの設立したギブソンと、クリスチャン・フレデリック・マーチンが創設したマーチンとに分けて語れば、分かりやすいと思います。マーチンはヨーロッパからアメリカへ渡ってきた楽器職人であり、ギブソンはアメリカのニューヨーク生まれで、やはり楽器職人です。当時の古典的・伝統的な楽器にバイオリンがありますが、構造的にはこれがギターのご先祖様的な構造を持っていると言って差し支えないでしょう。そのボディシェイプは「ラウンドトップ」で「アーチドトップ」ともいい、緩やかなアーチ構造をスタイルとして持っています。要するにトップ&バックが「少し膨らんでいる」ということ。日本のギターでは「チャキ」が有名です(※ピックギター持っていないので、ヤフオクに出ていた画像をお借りします。ここのショップからギター買ったことがあるので使わせてください)。 

初期(19世紀最後の方かな…)のギターの形はまずラウンドトップであったと考えられます。しかし、楽器には金管楽器や打楽器があり、そうした他の楽器とのアンサンブル(合奏)が次第に規模が大きくなり、演奏場所もパーラー的な狭い場所から本格的なホールへと変わっていく中で、ギターの演奏に限界が出てきます。ハイ、音の「大きさ」です。腕のいいギタリストがいても、トランペットなどに比べると音が小さすぎて目立たないのです。おそらく、アンサンブルの中で「不要論」が出るほどに目立たなくなっていたでしょう。で、そのギターたちにとって必要なのは「大音量化」です。それはまず、ボディを大きくすることで対応が図られましたが、それに成功したのはまずマーチンです。あの、ドレッドノートスタイル、つまり大型フラットトップの登場です。それまでのアーチドトップからフラットトップに変わったことでギターは大きな振動・音響構造を得て、何とかステージの上での存在感を失わずに済みました。ちなみに、「ドレッドノート (Dreadnought) 」とはイギリス海軍の戦艦の名前で、当時最大の威容を誇り、そこから「非常に大型」の意を持つようになったとか。日本語で言う「超ド級(並外れて大きい)」のドもドレッドノートのド。

この時点では、ギブソンに対して、フラットトップ化に積極的に取り組んだマーチンの勝利です。戦前のギブソンにもアーチドトップで「オーバルホール」を持つものはあったようですが(今もあるみたい)、フラットトップの大音量に比べ、アーチドトップのギターは消え去る運命の時代があったようですが、ここでギブソンが革新的な一手に出ます。それは「エレクトリック化」です。第二次大戦を挟んでの時期にこの技術が確立され、ギブソンはアーチドトップのギターに「ピックアップ(Pickup:振動を電気信号に変換する電子部品)」を搭載し、それを「アンプ(Amplifier:電気の増幅回路)」で大音量化するという、今日の「エレキギター」の原型により、ドレッドノートよりも大きな存在感をステージの上で発揮するのです。

と、ここまでの話としてまず整理できることは「ピックギター」とは初期のアコースティックギターの姿であると言え、その「生鳴」の音で聞かせていましたから、これはアコースティックギターです。ちなみに「アコースティック(Acoustic)」とは「電気的な増幅無しで演奏する楽器」と理解すればよいと思います。意味するところはエリック・クラプトンのアルバムで有名になった「アンプラグド (Unplugged)」と似たような意味で、直訳すると「プラグを抜いた」です。が、このアンプラグドには「最低限の電源を使用した」というニュアンスもあるようです。

で、マーチンのドレッドノートは、その勇ましい名前とは別に、ストイックともいえるような歴史を刻んでいきます。今日、われわれが「フォークギター」といったり「アコギ」と呼んだりするものの原型、というよりも「スタンダード(標準形)」となり、ギブソンのアーチドトップはソリッドなエレキギターへと進化し、ド派手なサウンドを放っています。以上、できる限り分かりやすく説明してきましたが、多少、端折るところはありましたけど、再確認ですが「ピックギター」はアコースティックギターなのです。しかし、この形がなぜ現在も残っているのでしょうか? ギターとしての「音響」という点ではフラットトップが圧倒的な音量を誇っているのに…。ハイ、ここにピックギターがいまだに残っている理由があるのです。それは、一般的な表現で言えば「あまり鳴らないこと」です。正確には、余計な「響き」が不要な奏法を得意として生きてきたと言えばいいのでしょうか。分かりやすい例で言えば、「ボトルネック奏法」や「ミュートの効いたベース音」です。ジャンルとしてはどうしてもブルースが主になりますね。ギターの好きな方はご存知でしょうが、フラットトップの「響く」アコースティックでこのボトルネックをやると、ちょっと、うるさい…。というか、音のまとまりが無くなります。

00 ギター ピックギターの適度な「響き」「サスティーン」「鳴り」が、ブルースの「枯れた」と表現される、素朴な音を奏でてくれるのです。とはいえ、この辺りは好みの問題ですが、ブルース好きな私はピックギターをあまり好みません。00スタイルのギターでも結構「枯れた音」は出してくれますし、それに、どうもあの「カッタウェイ」というシルエットがあまり好きではないので(きわめて個人的理由。カッタウェイではないものもありますが…)。学生の時に友人がチャキのピックギターを持っていましたが、音的にはあまり惹かれませんでした。と、ピックギターファンから反感を買いそうなことを書いていますけど、だからこそ、ピックギターはエレキギターへと進化できたのです。そうです、「響かない」ということは「ハウリングに強い」ということでもあるのです。本格的にエレキ化するピックギターは板を厚くしたりするなどしてハウリング対策を施し、ついには「ソリッド化」します。つまり中の空洞が無くなってしまい、「生鳴」は殆どないところまで進化してしまいます。

ピックギターをスタートとして、まず、フルアコースティック(フルアコ)ギターというスタイルが出来上がり、そして、そのボディにセンターブロックを入れたセミアコースティック(セミアコ)ギターが生まれ、レスポールのように、アーチドトップのソリッドギターへと進化していきます。フルアコは主にジャズ、セミアコはいわゆるフュージョン、ソリッドはロックというミュージックの領域を広げ、かつてステージの片隅に追いやられていた存在から、ステージの中央で観客を魅了する音を放ち続けます。もちろん、フラットトップのギターとして完成されたドレッドノート等のアコースティックギターも「ピックアップ」を載せ始め、新しいサウンドを生み出し続けています。あのピックギターはそうした「ギター史」の嚆矢(こうし:物事の初め)的な背景を持ちつつ、今日までその姿をとどめているのです。こんな記事を書いていると、一本、ピックギターが欲しくなってきました。まずい…。

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