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アコギのこれからの主流素材は合板


ハカランダ本記事は前回の「エレキのアコギ? エレアコの歴史」の続編のような内容となります。今やアコギ用の自然の良材は乱伐のために枯渇しようとしています。比較的ポピュラーであると思われたマホガニーもそろそろ危ないようです。ただしマホガニーには種類が様々にあって、あの建材の合板によく使われるラワンもマホガニーの仲間のようです。ですから危ないのは、ホンジュラスマホガニーなどの良材でしょう。で、エレキも含めてギターの「材」を思いつくままに挙げると、ローズウッド、マホガニー、メイプル、ウォルナット、エボニー、コア、ココボロ、スプルース、シダー等々。この他にもアッシュやアルダー、ブラックウッドとか、最近知ったものでは、ブビンガとかジリコーテとか…。別に材木屋になる訳ではないので、それほど突っ込みたいような興味がある訳ではありませんが、こうしたものが様々に登場してくるのも、それまでにギターの「トーンウッド(Tone wood:楽器用の木材)」として代表的であったローズウッドやマホガニーなどの良材が無くなって、その代替としてのトーンウッドが求められているのでしょう。

ココボロ右上の画像は我が家にあるギターたちの中の「ハカランダ」のバックです。右の画像はココボロ。いずれもなかなかの「追い柾目(中心が柾目で両脇が木目」です。他にも準柾目(完全な柾目ではない)のハカランダのギターもあります。フルコアのギターも。全て「単板」です。で、インディアンローズウッドの単板もありますが、例えばこのローズウッドなる材ですけど、一言では括れない材です。その種類をこれまた思いつくままに言えば、インディアンに加えてブラジリアン、マダガスカル、ホンジュラス、アフリカン、アマゾンと要は産地(生えていたところ)でそれぞれに呼称が違います。その杢目もそれぞれに違いがありますが、まず、それらを正確に区分するのは無理でしょうね。いったん材として流通しているものは、プロでも見分けがつかないとか。

同様にマホガニーにもいくつもの種類があります。これも産地別ですね。キューバン、ホンジュラス、アフリカン、フィリピン等々。レッドマホガニーとかサペリとかいった呼称で流通しているものもあるようです。極めてややこしい…。植物学的な分類と流通上での呼称が一致してはいないのです。代表的なものは高級素材として君臨する「ハカランダ」です。これはワシントン条約で記されている名称は "Dalbergia nigra" という学術名で一種のみ記載されているようです。いわゆる "Jacaranda" とか "Brazilian rosewood" とも記されてはいません。「ハカランダ(もしくはジャカランダ)」は流通上のローズウッドの一般的な呼称です。ですから、ハカランダは俗称であり、どの木を指すのかは恣意的であると言えます。ちなみに造園や林業関係業界でハカランダといえば、一般にブラジル原産のノウゼンカズラ科ハカランダ属である "Jacaranda minosifollia" を指すそうです。青紫色の花をつける鑑賞用の樹木で、熱帯、亜熱帯の各地で街路樹として利用されているとか。つまり、トーンウッドとしてのハカランダとは全くの別物。

この辺りに、ハカランダだから、とか幻のキューバンマホガニーとかいった商業的な「煽り」が盛んになり、訳の分からないままの高級素材「単板」信仰が蔓延したのでしょう。要は、流通上の「材」の良し悪しはプロのルシアーや職人がその音として判断できるとしても、怪しげな名前だけでは「=良い音」とはいかない、ということです。ハカランダもそうですけど、キューバンマホガニーと呼ばれるものに、もうトーンウッドが取れるほどの木は無いようですが、いくつかの木が流通段階で「幻のキューバンマホガニー」とやらに化けているようです。日本でウネウネとした木目を持つ材を「ハカランダ」なんて煽って高値を付けて売っている場合があります。これは真偽のほどは測りかねますが、トーンウッドとしては等級の低い加工の難しい木目の材(だから合板で加工する)が流通し、それが高級なハカランダであるといった「煽り」がいまだにまかり通っているとか。最上級のいわゆるハカランダは「柾目」で、これはアメリカのマーチンに独占されていたようです。

前段が長くなり過ぎましたが、良材であるトーンウッドの響きが素晴らしいものであることは十分に知っています。しかし、それが尋常でない価格で流通している事実もあります。また、単板と謳っている良材(幻とか二度と出ないとか、そう表現されていますけど)にけっこうな当たり外れ、怪しいものがあることも、これまた事実です。自然の良材トーンウッドの「響き」を手に入れようとすれば、相当にお高い代価を支払わなくてはならないようですが、それはもうその「音」自体の価格を遥かに超えているでしょうね。良質なトーンウッドが希少となっていることが全ての原因でしょうが。それに加えて、「材」の正確な素性が流通段階で不明となり、勝手に語られ、評価され、一般には訳が分からなくなっているのでしょう。それはもしかしたら、アコースティックギターの終焉を黙示しているのかもしれません。寂しいことですけど。

で、そんな中に「救世主」が現れてくると考えています。それは「合板」です。「単板至上主義」の方から言えば、「ラワン材に紙のようなトーンウッドを貼り付けた安物のギター(ちょっと言い過ぎかな…)」「ベニヤ板を貼り合わせた安物ギター(ベニヤ板自体は単板なのです。それを貼り合わせて合板、プライウッドとなります)」ってイメージでしょうが、確かにそんなギターもあるみたいですけど、「合板」というのはそもそもが高度な「技術」です。日本に派手な杢目のギターが多いように思いますけど、それは加工が難しい木を合板の技術で加工して「音質と強度」を両立させるギターを作ったのだと思います。もともと日本には家具の世界で優秀な合板技術があり、ギター製作メーカー(もしくは下請け)の中に家具製造メーカーが含まれています(マツモクなど。ヤマハもかな…)。それは「優れた木工技術」を有しているからであり、おそらくマーチンは早い段階からその技術に目を付け、将来的な「良材」不足に備えて技術を吸収していたのだと考えられます。それが今の「HPL(ハイプレッシャー・ラミネート)」であり、「Stratabond(ストラタボンド)」と呼ばれる集積材の技術でしょう。まだ、その技術に見合った評価をされているとは言えませんけど。

繰り返しますけど、「合板」とは「設計されて作られた素材」であると言えます。自然の木には当然ながら当たり外れもありますし、その等級というべきものも存在します。しかし、設計されて作られた「合板」は一定の品質を保つことができます。「工業製品」だからです。確かにそこには「自然の持つ艶や風合い」といったものはありませんが、とにかく「あるべきクオリティ」を保つことはできます。合板ではありませんけど、オベーションのバック材は木ではありません。そのクオリティにバラツキは殆ど無いでしょう。その、ガラス強化プラスティックで作ったボウル・バックは、エレアコにとって最大の課題、アンプからの音をギターのボディが拾ってしまう「ハウリング」対策から生まれたものです。ちなみにオベーションは自社のギターを「エレアコ」とは呼ばず、あくまでもアコースティックギターにピックアップを取り付けたものであるとしているようです。
オベーション ロゴ
そもそも、エレキギターが生まれ、アコースティックギターの世界でもドレッドノートスタイル、そしてエレアコが生まれたのも、全ては「音量のアップ」が目的です。純粋なアコースティックでは妙(たえ)なる響きは作れても、その音量には限界があります。一人、もしくは少人数で楽しむにはいいのですが、アンサンブルとして他の楽器と一緒になったり、ちょっと広い場所での演奏となると、音量には限界があります。ですからその活躍の場面に制限が出てきます。それなのに「良材の単板」ということで、けっこうとんでもない値段のものがあります。思わず、マネーロンダリングのための芸術作品のような用途があるのでは、と勘繰ってしまいます。

つまり、その使用場面と使用価値を高め、多くのユーザーに比較的安価で品質の安定したギターを提供できる「合板」技術は、これからのアコースティックギター素材の中心になるのではないかと考えます。そしてそれはピックアップを伴ったエレアコとしてプレイされるのでしょう。その「音」は、自然の木とは違ったとしても「電気」の力で様々な音色と響きを創り出してくれます。余談ですが、自然の恩恵で妙なる響きを奏でるアコースティックギターに後付けのピックアップを付けるのは「ライン録りもできますよ」程度の事でしょう。わざわざエフェクトなんてかけたら、「なんのこっちゃ」ってことになります。

アラカンオヤジの私自身としてはエレアコに興味はありません。遊びでピックアップを後付けで付けたことはありますけど、あくまで遊びです(でも、チューニングの時は便利)。パンセの一節(多分)風に言えば「一人の部屋で自分だけの楽しみを持つ」のが私のギターという趣味ですから。エレアコは次の時代を作っていく人たちのものでしょうね。「設計されて作られた素材」は多くのギターユーザーに利益をもたらす技術であると思います。最後の余談ですけど、私の持っているサイド&バックが合板のギターは、単板とは趣の違ったしっとりとした音で響いてくれます。そこには、作った人の設計思想が感じ取れます。

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