ブリッジの浮きと剥がれについて
■アコースティックギターというのは、単純化して言えば、職人さんが「木」を切ったり曲げたりして、「接着剤(膠やボンド)」を使って組み立て、塗装やバインディング、インレイで仕上がりを整えて製作します。その際に使う素材や技術等でギターのお値段が変わってきます。つまり、基本的にはボルト、フレームなどに金属工業製品を使う訳でも、釘を打つわけでもなく、人の技で組み立てられます(テイラーはネックをボルトで固定。効率化でしょうか…?)。接着剤はどれほど強力なものであってもボルト(ネジ)の強度に勝るものはないでしょう。もちろん、丈夫なだけのギターを作ったって、音が良くなければ「なんのこっちゃ」ですから、ギターという木造製品はある種の「脆さ」と隣り合わせで、あの素晴らしい音を出しているのです。
■つまり、アコースティックギターとは「壊れやすい」ものであるし、また、「メンテナンス」を必要とする、けっこう手のかかる代物だと思いましょう。それは、「美しい音」「弾く楽しさ」という「得るもの」があれば、「メンテナンス」などの手のかかるものに要するコスト的・時間的な「失う(消費する)もの」が必ず発生するということです。もっともその両者の関係は「行って来い(イーブン)」ではなく、「得るもの」のほうが圧倒的に高いと思います。なんせ、それが趣味というものですから。アコースティックギターを楽しむためには修理・調整に関して、必要最低限の知識は必要となります。まあ、プロを目指している方は別で、オヤジの楽しみ程度ですから、それほど高度なものは必要ないですけど。

■接着剤をブリッジにまんべんなく塗って張り付ければ、余った接着剤がはみ出します。それを取る工程はけっこう手間でしょうね。人の手できれいにふき取るという作業ですから。それを省略するために、ブリッジ全体に接着剤を塗るのではなく、少しマージンを取って、接着したときにそれがはみ出さない程度にブリッジ面に広がるよう、接着剤を使うということでしょう。一見合理的ですが、このやり方だと「接着剤不足」が起きる可能性が高く、そうなれば、ブリッジの「周囲」のどこにでも隙間ができる可能性はあります。弦を張っていない時は大丈夫でも、弦を張ってブリッジとボディーにテンションがかかれば表板は膨らむ方に変形し、接着が不十分であれば、そこが「浮き」、紙を差し込むと入ってしまいます。ギターの弦のテンションはブリッジと言うより、ピンで留めるタイプの場合はボディー側にかかります(膨らむ方向に)。オベーションのような作りのブリッジであれば、モロ、ブリッジにヘッド側へのテンションがかかりますけど。

■その判断のしどころですが、身も蓋もないことを言えば、その人次第です。どうしても「浮き」が気になるなら、「剥がれ」に至る前にリペアショップで「浮き」を接着してもらえば、コストも比較的安く済みます。程度によりますが、一万円以下位くらいかな…。で、音も変わらないし、気にもならないし、「浮き」の状態がそれ以上進行しないなら、そのまま弾いていても構わないでしょう。無責任に言っているのではありません。上記の私のギターは普通に今も弾いています。

■最後に余計なアドバイス(?)。「浮き」が「剥がれ」に至らないよう、予防のために接着しておく手もあると前述しましたが、とは言え、ブリッジに紙が入るというだけで予防の接着や、お金がいくらかかろうと「再接着」を依頼するのはそれぞれですけど、リペアマンの方に聞いたのですが、少なくとも、ブリッジの隙間に作業のために差し込むヘラの厚みである「0.3mm」程度は「浮き」がないと、作業がやりにくいようです。無理やりやるとブリッジ周辺に傷をつけてしまいかねないとか。ですから、とりあえずは、「浮き」が確認されても様子見しましょう。福沢さん数人分を貯金しておいて、ブリッジ修復用に取っておきましょう。
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■これからギターを始められる方のご参考にでもなれば。

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