木の音 人の技 トップタイトル

弾かない時 弦は緩める?緩めない?


ギター ネック これは「緩める派」、「緩めない派」、それぞれに同じ程度いらっしゃいますね。メーカーによっても割とこの辺りは曖昧だと思います。販売店やリペア工房は、聞けば「緩めておいた方がいいです」と答えますが、「絶対に何が何でも緩めるように」とまで言うのは少数派だと思います。物理的に考えれば、弦を緩めておいたほうが、ギターにストレスがかからない訳で、それが良さそうには思えますけど、それがそう簡単には行かないところが悩ましいのです。まず、木の特性ですがよほど特殊な加工をした木でない限り、木は「元の形に戻ろう」とするようです。形状記憶のようなものですね。あの東大寺大修復の時も、屋根の瓦を取り払うとその下の木がググッと反り上がってきたそうです。千何百年も前に切り出された木材が、未だに元の形に戻ろうとしている力を持っているというのは、驚きと言うより何やら感動します。

ですから、弦を緩めるとネックはテンションを失い、元に戻る、つまり、「逆反り」の方向へ戻ろうとすることになります。元の形が「順反り」ってのは不良品。特にアコースティックギターでこの問題は色々と議論されることだと思いますが、つまり、弦を張ったり緩めたりを繰り返すと、理屈ではネックが何度も前後に動くことになります。となると、その動きで一番ストレスの掛かる部分(多分、ヘッドの付け根辺りでは)にいわゆる「疲労(弱る)」が起き、金属などではこれでポキリといくこともあります。あくまでも理屈ではあるのですが、ギターは弦を張ってテンションをかけた状態が「自然な形」という考えもあながち無視はできません。事実、某メーカーの職人さんは「それを前提にギターを作っている」と言っているところもあります。まあ、これは特殊な事ではなく一般論としてはそうでしょうね。

で、「緩めるのか、緩めないのか、どうなんだ」と思われるのは今しばらくお待ちください。結論から先に行けるほどこの問題は単純に判断できるものでもないのです。「恒常性(Homeostasis)」という言葉がありますが、これをシンプルに考えれば、生物や鉱物が「内部の状態を一定に保とうとすること」ということです。ギターは生物でも鉱物でもないですけど、かつては「木」という生物ではあり、ギターとなっては「木材」という、鉱物に近い(?)ものかもしれません。つまり、木に「元に戻ろうとする力と、同じ状態を保とうとする力」の双方があるとすれば、弦を張ってネックがストレートな状態であれば「木は順反り方向の力を受けつつ、弦のテンションと釣り合いをとってそのままの状態でいようとする」なんて考えれば、何もしない方がいいように思えます。実際、そのようなことをおっしゃるルシアー(ギターの個人製作家)の方もいらっしゃいます。前述の、ネックはテンションをかけることを前提に作っているという、某メーカーの職人さんが言われることと共通はします。

テイラーは「弦なんか緩めなくてもいい」とおっしゃっているようですが、あのメーカーはネックがボルトオンですから簡単に交換できるそうで、要は「ネックが曲がったらお買い上げの上、交換してください」ってことでしょう。商売上手ね。マーチンは1970年代後半からギターに“USE MEDIUM GAUGE OR LIGHTER, STRINGS ONLY(ミディアムかそれよりライトな弦を使ってね)”ってなことを記していますね。私の持っているシグマにもそのような刻印が内部にあります。要するに、「ヘビーゲージは止めてね」って事でしょう。これは急にマーチンのギターが脆弱になったというより、多分、メンテナンスの対応が負担になったのでしょう。マーチンはこのころにギターの剛性を上げるため、「スキャロップド・ブレーシング(ブレーシングにアーチ状のザグリを入れる)」を完全に止めたのかな(1940年代くらいから止め始めているようです)? いずれにしても、弦の強すぎるテンションがギターに悪いことを公言していますね。ということは、「弾かない時は弦を緩めてね」ってことでしょう。

ギター ハードケース このように、ギターを弾かない時は「弦を緩める」「弦を緩めない」には決定的な決め手というか、「こうするべきだ」という明確な理由がないように思えます。私の場合で言えば、「弾かない時」、長期の場合は弦をユルユルにしてハードケースで保管。毎日弾くギターに関しては「緩めない」、です。理由は、それでギターのネックにトラブルが起きたことがありませんし、トラスロッドなんて殆どいじったことはありません。まあ、複数のギターを順に弾いて楽しんでいますから、ローテーションのような形ができて、ハードケースにしまっている時はギターが「養生」のような状態になっているのかもしれません。しかし、数か月は、途中で弦を張り換えるにしても、張りっぱなしにしています。理由は、思い立ったらすぐに弾きたいからです。

とはいうものの、ほぼメインで弾いていたシグマのブリッジが剥がれて、修理にリペア工房へ行ったとき、弦を張りっぱなしにしていたことがブリッジ剥がれに影響はする、とか言われて、でも他のギターは何ともないと言うと、「個体差がある」とか。それじゃあ「運が良いか悪いか」ってことみたいじゃないですか。もちろん、弦のテンションのほかにも「湿度・温度」「製作時の接着の甘さ」等々、ブリッジが剥がれるアクシデントの要因は様々にあり、これが原因との特定はできないということですが、まさにあれはアクシデントですので、弦のテンションとの直接関係はあまりないような気が…。

ギター ヘッド で、リペアマンの方と現実的な対応について話してみましたが、まあ、妥当であると思えたのは、「6・5・4弦」をペグ一捻り程度下げておく、ってことです。まあ、その程度のテンションを緩めておけば、多少はネックやブリッジへのストレスも軽減できるし、チューニングもすぐにできます。「緩める」「緩めない」と二元的に議論するよりも、その程度の「中間」は有りですね。まあ、今は某ギタリストの影響か、アコースティックギターでも、弦高を下げてエレキ並みの弾き方をする人が多いので、エクストラライトやカスタムライトなどのテンションが低い弦を使っている人が多いみたいですから、これくらいの対応で十分では、と考えます。昔のB.B.キングみたいに、ヘビーゲージを張って、1音以上のチョーキングを軽々とやるような人はあまり見かけないので。

長期にギターを弾かない時は弦をユルユルにしてハードケースで保管、ということには誰にも異論はないと思います。私の知人が弦を張ったまま長期保管して、見事な「腹ボテ」になったギターを見たことがあります。なかなかの恰幅の良いシルエットでした。

とりあえず色々へ




■これからギターを始められる方のご参考にでもなれば。
これからギターを始める方に バナー

【商品検索】

↑「すべて表示」をクリックするとAmazon.co.jpの検索結果一覧に移動します。

■サイトポリシー ■プロフィール ■お問い合わせ
ページトップへ戻る

Design by Megapx / Template by s-hoshino.com
Copyright(C) Ureagnak All Rights Reserved.