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ヤマキ オーダーメイドギター


自分が欲しいギターはもう十分(以上)に揃っているので、もう買うことはない(筈…)と思っているのですが、まあ、言い訳とはいえ、「好きなものは好き」ということで、WEB上のギターショップや、主にヤフオクのギター売買のコーナーを眺めては、日々楽しんでいます(変?)。色々なギターがあるものだ、という月並みな言葉が出てきますが、私は「ギターという楽器の持つ造形美、工芸品としての美しさ」にも強く惹かれますので、そうしたギターを眺めていても楽しいのです。で、あくまでも「工芸品としての美しさ」ですから、珍品や豪華なモデルを好んでいるわけではなく、「これはどんな音を響かせるのだろうか…」「これはどういう素性のギターで、材はなんだろう…」とか、あくまでもギターとしての本価値、つまりは「音」を伴った「美しさ」に惹かれます。満艦飾のインレイが施されたようなものに興味を持つわけではありません。たまにはありますけど…。

ハカランダ 柾目 で、ある日、いつものようにヤフオクを覗いていたら、妙に気になる一本を目にしてしまいました。何が気になったのかと言えば、その「材」の木目です。ハカランダ材の「柾目」なのです。うねったような「木目」はよく見かけますし、合板のものは持っていますが、「柾目」のものはあまり、というか殆ど目にすることはありません。マーチンの古いモデル、いわゆる戦前のプリウォーモデルには「これって本当にハカランダ…」と思うような「柾目」の材をサイド&バックに使ったものを画像で見たことはあります。それは、解説無しで見るとインディアンローズウッドか、ものによってはマホガニーに見えるようなものもあります。それらはれっきとしたハカランダで、要は「柾目」のものが今は殆どないということです。ちなみに、右側の画像もインディアンローズウッド(もしくはパリサンドル)と言われても「そうか…」と思う杢目ですが、実際、よく似ていて、マーチンの職人でさえ間違えることもあるそうです。が、この黒っぽい筋(ブラックインク)が不規則に入っているのは、ハカランダの特徴と思えるのです。まあ、実際に手にしてみないと何とも言えないわけですけど。まさに、ギャンブル。

これは本当かどうかは測りかねますが、けっこう信憑性のある話として、ハカランダの柾目は殆ど(マーチンに)使い尽くされて、日本に回ってくるのは「材として加工が難しい木目のもの」ばかりだそうで、そのまま曲げ加工をすると「割れて」しまうようなものであるということをWEBの記事で読んだ記憶があります。その結果として、日本人はハカランダというとウネウネとした派手な木目が特徴と思い込み、割れやすいから合板加工での使用が多いとか、ってことらしいです。まあ、曲げっていうのは職人の技術でしょうから、その話を鵜呑みにはできないのですけど。私はプロの材木屋ではありませんから、正確に「これはハカランダ」って分かる訳ではありませんが、とにかくハカランダと言えば派手な木目が多く、けっこう「これ、違う材じゃない?」と思ってしまう、怪しいのをよく見かけます。しかし、私が目にしたのは高い確率で「ハカランダの柾目」と思える材をそのサイド&バックに持つ国産ギターなのです。珍しい…。

Folks スタンプ ブランドは「Folks(フォークス)」になりますが、これは「Yamaki(ヤマキ)」がOEMで製造したもので、当時の栗林楽器(今は無い)がセミオーダーで販売していたもののようです。ギターの内部に "MANUFACTURED BY THE FOLKS MUSICAL INSTRUMENT" のスタンプが。ちなみに、そうした処に見当をつけるまで、3日くらいWEBで調べまくりました。100%確証のある情報ではありませんが、状況的にはほぼ間違いなさそうとの思いを持てるところまでは来ました。「ヤマキ」と言えば、かつてはヤマハと並んで日本のアコースティックギターの黎明期に大手ブランドとして名を馳せたメーカーです。以前から興味はあったのですが、これといった機種にあまり出会うこともなく、数回、サイド&バックがハカランダの単板というF-1100やF-1150が出品されていたことはありましたが、ヤマキにはコアなファンが多いようで、けっこうお高い価格になってしまいます。ハカランダはすでにニューヨーカータイプを持っていますし、その音に満足していますから、どうしても欲しい機種でもないのですけど、どうにもその「柾目のハカランダ」は気になる存在でした。ある程度のお値段ですので、そう簡単には売れず、数か月はヤフオクで目にすることとなりました。

で、たまたま少し時間が経ってヤフオクを見てみると、またその「柾目のハカランダ」に出会ってしまいました。やはり、なかなか売れなかったのか値下げされていました。価格設定は手の出せないほどではないのですが、情報が少なく、前オーナーがヤマキにオーダーしたもの、材はハカランダ使用(合板か単板かは不明。内部に割れ止めが無いからだそうで。これって、あまりあてにならない…)程度のことしか分かりませんけど、その特徴から前述のセミオーダー品であろうという見当まではつきました。しかし、もしこれがハカランダの合板ならちょっとお高い。しかし、単板であるとしたら「破格」のお値段です。単板だろうが合板だろうが要は音が良ければ問題はないのですが、いくら合板を材に使ったギター作りで定評のある「ヤマキ製」とはいえ、合板ギターとしてならはっきり言ってかなり高いし、それなら(ハカランダ合板)すでに所有しています。とは言え、気になるのです。

たとえ合板であろうと、「柾目のハカランダ」は珍しいし、貴重な「柾目」の材を「わざわざ合板として使うだろうか?」という疑問が湧いてくるのです。つまり、柾目のハカランダであれば、そのまま単板で加工するはず、という考えが合理的であると思うのです。出品者は前オーナーからそのギターを買い取って、「単板かも?」という思いが捨てきれないようなのですが、保証できるほどの情報が無いようです。ハカランダであることには自信があったのでしょう。(不謹慎な推測ですが)栗林楽器にOEMでヤマキが対応していたのは1969年から1972年くらいまでのようですので、そのころにセミオーダーできる方であればそこそこの(経済力をもった)年齢で、そうなればすでにこのギターは主を失っている可能性があり、例えばその処分で出てきたものなのかもしれません。であれば、出品者が前オーナーから情報を十分に取れず、「単板」と言い切れないがその線を捨てきれずに中途半端に高く売ろうとしているのも頷けます。この辺りはヤフオクで品定めをする醍醐味でもあるのですが…。とはいえ、「即落価格」で設定されているその価格で手を出すにはけっこうリスキーです。半世紀近く前の個体ですし…。しかし、万が一、ヤマキのハカランダ単板モデルであれば…、との色気もあるし、事実この頃のギターメーカーはけっこう良い材を単板で使っています。

もうギャンブルです。悩んで数度パスして、結局、落札しました。オカーチャンに頭を下げて「もうこれが最後!」って、まったく信じていないでしょうけど…。私はハカランダ教の信者でも、単板至上主義者でもありません。あの「柾目」に目が眩んでいるだけなのです。「木目」なら興味は示しません。合板だろうが、単板だろうが「柾目のハカランダ」は珍しいのです。

Yamaki ギター ハイ、ついにそのギターが届きました。ハードケースはついていませんので、緩衝材の紙が詰まった段ボールで我が家にご到着。その、ギターが入った段ボールを持った時、心臓がドキッ…! 軽いのです。合板であればもう少し重いはず。期待マンチクリンで梱包を解き、ご対面! 改めて本物を見ると、きれいな柾目です。ハカランダの特徴である「ブラックインク(真っ黒な杢)」もあるし、蜘蛛の巣状のモニャモニャした箇所もあります。サイドも目の整った「柾目」。とりあえず、内と外の杢目を確認してみると、概ね合っています。余談ですが、これはリペアマンの方から聞いたのですけど、単板でもドンピシャリで裏表の杢目が多少合わないこともあるそうです(○と×位に全く違っていたら、単板ではない)。半世紀近い個体なのに、嬉しいことにボディへのダメージはかなり少ない。ロッドカバーが欠落しているのはご愛敬。装飾など全くない、典型的なドレッドノートです。そのサイド&バックの「柾目」を除いてはこれといった特徴はありません。ヘッド形状がなぜかグレッチ風ですが。あと、古式ゆかしい「0フレット」です。これって、復活させればいいのに。けっこう、弾きやすくしてくれますよ。興味のある方は本サイト「とりあえず色々」の「0フレット 何故、無くなったのか…」をご覧ください。ヘッドに「GK」か「KG」か分からないマークが付いていますが、まあこれは「栗林楽器」のロゴマークと考えるのが妥当でしょう。

ギター ヘッド さあ、肝心のその音です。ペグはかなり昔のタイプですが、思ったよりスムーズに回ります。で、チューニングをしている最中から「ン…!」。 音が伸びる…。私が使っているチューナーは古い機械メーター式のものですが、それがニューヨーカー(サイド&バック材ハカランダ単板)をチューニングしている時と同じような反応をします。針が、ピタッと止まらずにユラユラと動いたり、急に振り切れたりするのです。おそらく、倍音を拾っているのだと思うのですけど…。ラッカーがかなり薄いので、音の出も良さそう。

チューニング終了。さあ、緊張の瞬間です。まずは、軽くアルペジオで…。ハイ、もうこの時点でビックリです。部屋中にギターの音色が響きます。軽く弾いているのですが、音圧というか音量は半端じゃない。これは経験則なんですけど、ハカランダは「キレ」のある音ではあるのですが、強めの反応というか、アタック感はあるものの、若干音の「立ち上がり」が遅く(伸びるからか)、そしてサスティンが効きます。ですから、あまりゴチャゴチャとした忙しい曲でかき鳴らすより、少しゆったり目のアルペジオ主体の演奏に向いていると思います。付いていた弦が古いのか、やや芯のない感じですが、それでも十分に部屋の中を密度の高い響きで満たしてくれます。確信しました。これは「単板」の奏でる音色です。しかも「当たり」! いや…、もう単板でも合板でもいいのです。事実、このギターが奏でてくれる音が「手に入れて良かった」と思わせてくれているのですから。それから、気が付いたら数時間は弾き続けていました。余談ですが、先にも書いたように、よく「単板」のギターであればサイドの内側に「割れ止めがある」なんてのが判断の基準になっていますが、これって殆どあてになりません。合板のギターだって割れ止めのあるものはあるし、その逆もあります。私のニューヨーカーはサイドの内側に膠(にかわ)を塗ることで補強をしています。このギターのサイド内側にも、膠か何かを塗られたような形跡(埃っぽい質感)はありますが、それはどうでもいいことです。

ブリッジ&サドル加工細かい点を言えば少々ブリッジ後方のボディがプクッと膨らんでいましたが、音に影響なし。あと、ブリッジのサドルが妙な感じに加工されていましたが、その意図は分かりませんけど、これも音には影響なし。で、音がすべてとはいえ、確かに「単板(音が暴れ気味に響く)」と思える、珍しい「柾目」のハカランダを手に入れることができて、嬉しくないわけはありません。さすが、一世を風靡したヤマキ製、といったところでしょうか。しかし、そのヤマキはもうありません。ギター内部の作りはちょっと今風のものとライニングなどが少し違いますが、基本的には同じ。ですが、かなり丁寧に作り込まれ、接着には膠が使われています。トップ材は、ヤマキと言えばこの時期、シダーのはずなのですが、これは前オーナーの注文なのか、(おそらく)アカエゾマツ。今、こんなギターを作ることは難しいでしょう。凝ったギター奏法ではなく、のんびりとアルペジオを奏でていて、飽きることのない楽しいギター。オヤジが風呂にでも浸かっているような気分で鼻歌交じりに楽しめるギターです。あの頃(若い頃…)を思い出しながら。

【追記】
文中で「柾目」と表記していますが、このギターのバックは完全な柾目ではありません。一本の原木からギターの材として取れる柾目材はハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)でなくとも、1割程度だそうです。で、この材は多少、斜めに切り取られた材のようです。目が詰まっていて良い材ですから「準柾目」というところでしょうか。ですから、木目が外側から内側にかけて広がり気味に流れています。切り口を見たら、木目が斜めでしょう。残念ながらマーチンのプリウォーのような一級品の材とはいきませんね。

で、さらにしばらくして気が付いたのですが、このギターのバックには手作業で、と思えるアーチがかかっているのです(アーチバック)。型押しではなく、ギブソンのカスタムギターに見られますが、決して簡単な技術ではありませんし、どのギターにも施せるものでもありません。型押しではなく、板を鉋(小型のカンナ)で削って作るので(機械を使う人もいる)、根気と集中力のいる加工作業のようです(合板でやる加工じゃないですね)。その目的は音量のアップ。微かですが、このギターのバックにはカンナの痕が光の反射具合で確認できます。手で触っても分かりません。半世紀近く前にこのギターを作った職人の技に敬意を表します。

ちなみに、アーチバックには他に「ラウンドバック」、トップに対しても含めて「ドーミング」という表現があるようですが、「ラウンドバック」はフルアコなどに見られるように、膨らみのある材の周辺がライニングとの接着のために少しフラットになっている作りのようで、「ドーミング」は調べた範囲内では「アーチ」と同じような加工のようです。ただ問題は、それが「型押し」によるものか、「削り」という職人の手作業によるものかという点でしょう。

【更に追記】
上記の事は私が勝手に考えたことなのですけど、確かにそれも、昔の職人的な作業の痕跡として、これが単板素材であるという推測にはなると思うのですけど、ある時、別の、サイド&バックがココボロの単板である「南米生まれのアコギ "Z"」を弾いていた時、バックの内側の方にこのヤマキと同じような横筋上の「削り痕」があることに気が付き、これは何の工程での痕なのか気になって調べたのですけど、どうも、素材の木を板に切るとき、単板は鋸(のこぎり)で切り、合板の場合は薄くてよいので鉋(かんな)で削ぎ切るそうです。ですから、のこぎりで切った後、板には「ノコ痕(というらしいです)」が出て、通常は木工用のベルト研磨機(電動のベルトサンダ)で平らにするようですが、昔の手作業かテキトーな仕事の場合は、この「ノコ痕」が連続した等間隔の横線となって残るようです。「Z」はバックが一度剥がれた時に単板であることを確認しています。

で、このヤマキの方はバックの側に光にかざして見ないと分からない横筋が痕として残っているのです。で、私はこれを「アーチド加工のための手作業による作業痕」と思ったのですが、もっと単純に考えれば、単板を鋸で切り出したときの「ノコ痕」であるとする方が合理的でしょう。「Z」のほうはもともとが雑な作りですから、内側の方はそれほど丁寧に研磨されず(まあ、音には関係ないですけど)、痕が残っているのでしょうけど、このヤマキの方は内も外も研磨してありますが、内側は木の地がそのままで、塗装されている外側の方は光の具合で見える程度の「ノコ痕」が出ているのだと思えます。昔の手作業での研磨故のことかもしれません。もしくは、2mm~3mmの間で設計されるバック材を元の素材の厚さ目いっぱいで使ったために、ギリギリまでの研磨でバック材を仕上げ、微かな「ノコ痕」が残っているのか。

以上はあくまでも自分の推測であり、単板によくあるという、バックの規則性のない歪みも光の加減で数か所確認できます。私はサイト内で主張しているように「単板至上主義」ではありません。要は、好きな響きのギターを楽しんでいるだけで、それが合板だろうが単板だろうがどうでもいいのですけど、こうした事を製作上の事を調べたり、ギターの経歴から調べたりして推測するのが好きなだけです。なんせ、趣味ですから。これが絶対という事もありません。いずれにせよ、このヤマキはストロークすればうるさいほどの音を奏で、弾き語りをする人にはけっこうな声量を要求するでしょうね。フィンガープレイを楽しむ私にはちょうど良い音量ですけど。

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