木の音 人の技 トップタイトル

(謎の)00モデル


ダブル00モデル ギター このギターはその素性を調べるのにこれ以上なく疲労困憊しました。結論から言えば推測の域を出ないところで限界にぶつかりました。「興味本位」で安く買ったわけですから、その音には期待は殆どしていませんでした。サイド&バックがマホガニーの機種は初めてだし、最初に手にした時、あまりの軽量さに驚き、まあ、ミニギターの親戚程度に思っていたのですが、トンでもありませんでした。今までに味わったことのない中低音での甘く柔らかな音。そのくせアタックには芯があり、余計な倍音がついてこない適度なサスティン。その軽さに驚き、またその音に驚かされました。嬉しい誤算です。木材は全体にカラカラに乾ききっています。段ボールに梱包されて届いたとき、あまりの軽さに、「なんか別のものが間違って入ってんじゃない」なんて思いました。それほどに軽かった。

この00モデルはヤフオクで目にして、一発で気になり入札しましたが、やはりあまりにも素性がハッキリしないし、00モデルのギターはなじみがないのか、競合もつかず比較的安く落とせました。とはいえ、ハードケース無しでそこそこのお値段です。素材はスプルースのトップ単板でサイド&バックはおそらく合板だと思うのですが分かりません。とにかく軽すぎます。歪みなど全くなく、きれいにフラットなシルエットを見せています。大きさは000モデルよりボディーが二回り位小さいサイズですね。

このギターの何に興味を持ったかというと、「トップのロゴ無し」「ボディー内にシールもなし」、出品者は代理で、このギターについてのことを直接にはよく知らないようで、類推するしかない点です。ヤフオクにはこのような「素性不明カスタム」「試作品」「改造品」がたまに出ますが、多くはキメラですね。キメラとは「羽を持ったライオン」とか「尻尾が蛇のトラ」など、想像のハイブリッド生物です(今現在では遺伝工学の進歩で、それに近い生き物が出てきそうですが)。ギターにもこのキメラ的なものが存在するようです。そりゃあ、職人さんが工房で作るわけですから、イレギュラーな個体はたくさん出てくるでしょうね。A社のネックにB社のボディーがくっついているなんて、珍しくはありません。

で、このギターの素性を示すのは、元のオーナーがマーチン風に仕上げる途上であったということと、日本のクロサワが作ったものが元であること(代理出品で、質問しても正直要領を得ない…)、そしてここが最大の謎なんですが、「00-15モデル」であるという主張。ちょっと待ってくださいよ。00-15は本家マーチンにも確かにありますが、これは「総マホガニー」のモデルで表板もマホガニーです。スプルースのものはありません。で、クロサワもスタッフォードのブランドで「SF00-15M」というモデルを出していますが、これも総マホガニーのモデル。で調べてみたら「SF00-15s」というモデル名のギターがありましたが、これが不自然極まりないギター。まず、機種名の最期の"s"がもしスプルースを表している記号だとしたら、あり得ない。そんな幼稚な型番で付けたの見たことないです。もとがマホガニーだから区別するために"s"を付けたとしたら余計に間抜けな型番です。世の中、スプルーストップの方が多いのです。SF00-15Mと区別するなら、SF00-15と単純にするはずです。しかしここで循環…。00-15はそもそも総マホガニーしか存在しない…。

で、「SF00-15s」とやらはグロス塗装で、私のはサテン塗装。しかも、私のはネックが素材断ち切りですけど、「SF00-15s」とやらにはバインディングが…。ペグも違う。更に不思議なのはその手の製品のロゴがマーチン風のロゴであり、ホールから見えるシールがオレンジで楕円の、これって、クロサワがウクレレの製造を中国に委託したものについている奴ですよ。変…。スタッフォードがマーチン風のロゴを使っていたのはクロサワが、Shenandoah(シグマと同じマーチン系のブランド)とSigmaをラインUPしていた時のスタッフォードでしょ(多分)。で、そもそもスタッフォードの古いロゴは斜め上に切れ上がった「書体」風のロゴだったはずです。しかもさらに調べると、トップのロゴがその斜めの「書体ロゴ」で中のシールがマーチン風のロゴって個体がありました。コピーしただけのような黒い印刷。000モデルです。スタッフォードに000モデルがあること自体は別に不思議ではないとしても、この個体も極めて不自然。一つの個体に違うロゴが付いているなんての(ギターに限らず)見たことない。ハッキリ言って、そんなのはあり得ない。違法コピー品…。

ダブル00モデル ギター で、とどめはWEBで情報を探し回り、ようやく私が持っているのと同じような個体を持っている人のブログを見つけ、その方もそのギターはクロサワの00-15(総マホガニーではなく、トップはスプルース)らしいという情報をお持ちだったようで、直接クロサワに聞かれたようです。するとクロサワの返事は、「そのようなギターは知らない」という事だったそうです。「えっ…」ですよ。この辺りで素性調査も暗礁に乗り上げました。私が手に入れたギターにはPUがついていまして(後付け。流行ね…。要らないのに)、サイドプラグという説明がありましたが、私的には通常サイドプラグというと、ギターに穴開けなどの加工をせずに、ラインをサウンドホールから直接、横に出すという認識(日本ではそうだと思います)でしたが、そのギターにはまさにエンドピンから離れたところに穴が開けられ、ジャックが付いていました。これはアメリカの連中がよくやる加工で、何度か目にしたことがあります。エレキ感覚なのでしょう。出品者に確認すると、そのPUは「コンデンサーマイク」だって…。私、PUはいくつか使っていますがパッシブタイプのコンデンサーマイクなんて見たことありません(海外にはあるみたい)。コンデンサーマイクを単独で使うのは実用的じゃないでしょ。試しにアンプにつないでみると、やはり即ハウリング…。

もう、このギターの素性探しは諦めました。私の見解としては、このギター、もしかしたらアメリカあたりにあったんじゃないかと思います。なんせ、カラカラに乾いています。しかし、アメリカ人はグロス塗装を好むらしいので、サテン塗装は…。まあ、無いことは無いでしょうね。しかもこのPUのタイプと取り付け方。よく見るとナットが交換されています。ヘッドのロゴを落とした後の処理は完璧です。サドルにはマーチンのように弦が出るところに溝が切られています。弦高の調整もバッチリ。クルーソンタイプ・ペグの軸が歪んでいるのはお約束のようなものダブル00 ギターでしょうが、ペグのつまみは、ダメージド(交換品?)でしょうか、いい色に古びています。仕上げ方が素人とは思えない。速い話、これがかつてのマーチンの試作品と言われても、私は信じるかもしれません。音がちょっとお茶目な感じですけど。まあ、ギターというものは自然の木から人の手によって作られるものですから、料理のようにその時々で違う個体が様々に出ます。マーチンと言えども完全に同じ品質で大量のギターは作れないでしょ。

いずれにしても、想像以上の良い音と、調整したような弾きやすさ。ラッキー! このギターにはタカミネのPT-400シリーズのハードケースがぴったりでした(見つけるのに苦労した…)。もうブルースを弾いてくれと言わんばかりのこのギター、一時期は私のメインギターでした。

【追記】
久々に弦を張り、このギターを楽しんでいたのですが、やはりなんとも面白い良い響きを持ったギターです。チープといえばチープ。しかし、俗にいう枯れた音といえば枯れたような感じの音。適度な弦鳴り(弦の金属的な響き)が箱鳴り(ボディの音)と絡んで、まさに私のイメージとしてブルージー。家人がモーリスのW100で練習していますが、いくら私の方が弦を弾く力があるとはいえ、ドレッドノート並み、いえ、それ以上の音を響かせます。マジ…。

で気持ちよく弾いているうちに至極単純なことに気が付きました。本文中で、このギターの素性を突き止めることは諦めたと書きましたが、「そうだ」と思い、ギターのネックとボディをつなぐ箇所の内側にあるブロックを確認しました。ハイ、シリアルらしきものも何かの型番のようなものも何もありません。削ったような痕も全くありません。「最初にそこを見るべきだろ」って、そうなんですけど、完全に「改造品」という思い込みで、まったくのノーマークでした。これで、このギターの素性が分かりました。

おそらく、どこかの駆け出しルシアーの習作か、素人マニアの製作したギターでしょう。もし、メーカーが製作したギターなら、ここに何らかの数字や記号が記されている筈です。ブロック自体に何も書かれていないギターもありますけど、ここまでノッペラボーなものは製品としてまず無いでしょう。それが無いという事は、市場に流通させる前提で作られたギターではなく、最初から、マーチンの00モデルのコピーとして作られたものなのでは。しかし、誰が作ったか知りませんけど、ネックのマホガニーにはうっすらとトラ杢が出ていますし、トップのスプルースにはうねるような杢がビッシリ。改めて見るとけっこうな良材。ライニングなどの構造的な作りは完璧です。ダメージド風のペグも最初からついてたものかも…。だとすると、いつ作られたのか…。

たまたま見ていたメリカルに「Stafford SF-0015S」として、同じようなギターが出ていました。トップの書体は筆記体の昔のもので、中のラベルのロゴも同じもの。ネックジョイント部分の内側のブロック部分は見えませんけど、「マーチン0015レプリカ」と紹介されていました。だ・か・ら、マーチンに0015ってな、トップがマホガニーでないモデルは無いのですよ。どこを探しても。これが、私が手にしているものの元であるのか、どこかで(勝手に)作られたものなのか、分からないことに変わりはないのです。前述の通り、クロサワ自体が「そんなモデル、知らない」と言っているのですから…。トップの素材も微妙に違うような…(画像が小さくてよく見えない)。

てな事で、本当の素性までは分かりませんが、これが「改造品」でないことは分かりました。しかし、そこそこの腕のある製作者によって作られたギターであることは間違い無いと思います。余計に、このギターへの愛着が湧いてきました。まさに、謎の00モデル。

うちのギターたちへ




■これからギターを始められる方のご参考にでもなれば。
これからギターを始める方に バナー

【商品検索】

↑「すべて表示」をクリックするとAmazon.co.jpの検索結果一覧に移動します。

■サイトポリシー ■プロフィール ■お問い合わせ
ページトップへ戻る

Design by Megapx / Template by s-hoshino.com
Copyright(C) Ureagnak All Rights Reserved.